リローディング(7)

火薬を入れたので、後は弾頭を装着(シーティング = seating)して終わりです。 上の写真でプレスの台上の左側がブレット・シーター(bullet seater)の本体です。 火薬を入れた薬莢を下側から入れてあります。 上に開いた穴は弾頭を入れるためのもので、台の右側にある先端が凹んだ棒の付いた部品は弾頭を薬莢に押し込むためのものです。

まず弾頭を上の穴から落し入れます。 穴は弾頭の直径よりほんの僅か大きい程度ですから、中に入っている空気が外周の僅かな隙間から徐々に上に抜け出るために、弾頭は「ストン」というよりは「スー」とゆっくり落ちていきます。 薬莢はリサイズしてありますから、弾頭はネックの上で止まります。 次に弾頭を押し込む棒を上から差し込み、プレスで弾頭を押し込みます(プレスで押し込む力によってネックが広げられて弾頭が中へ入り込んでいくわけです)。

私が使っているシーターはもともとはWilson社製ですが、弾頭を押し込む部分だけはマイクロメーター付きのSinclair社製で、棒の長さを微調整する事によって、弾頭が中に入る深さを変えられます。 命中精度の点からは、弾を銃に装填した際に、弾頭の流線形のカーブが始まる部分がちょうど銃身のライフリングの始まる端に当たる(ランド タッチ = land touch)のが理想的です。 専用の器具を用いれば、自分の銃に合った長さを調べられますが、私は市販実包程度の深さから徐々に浅くして(つまり全長を長くして)どの深さでライフリングに弾頭が触れるかを調べて適切な深さを割り出しました。 弾頭の形状が違うと、適切な深さも微妙に違ってきます。 また、このように適切な深さでシートすると、弾倉(マガジン = magazine)に弾が入らない場合もあります(特にレミントン社製の銃のマガジンはウィンチェスター社製のものよりは短いと聞いた事があります)。

上は30口径の308Winでよく使われる168グレイン(約10.89グラム)の重さの弾頭をいくつか並べたものです。 左から、Sierra社製、Hornady社製(製品名 A-Max)、同じくHornady社製のモリブデン・コート弾、Berger社製のモリブデン・コート弾です(実際は写真の青よりもっと黒っぽいです)。

一番左と左から3番目の弾頭はほとんど形が同じで、残り2つは形のカーブがより直線的なのがわかります。 またモリブデン・コート弾も一番右のBerger製の方が表面に光沢があります。 いずれも、底がすぼまったボート・テール(boat tail)という形状で、平らなフラット・ベース(flat base)のものよりは風の影響を受けにくいです。 光沢のある3つの弾頭も直線部分から下が光沢がないように見えますが、これは撮影時の光線具合によるものです。

2硫化モリブデンを表面にコートした弾頭が使われるようになったのは90年代半ばからだと思いますが、特に社長自らもベンチレスト射撃を行うBerger社が製品化して知名度が増したように思います。 2硫化モリブデンは潤滑作用があるため、弾頭が銃身を通過する際の摩擦が 1/3以下に低く押さえられ、又、銅が表面に出ていないので、銅が銃身内部の表面に付着するカッパー・ファウリング(copper fouling)が 1/10以下に激減されます。 カッパー・ファウリングが少ない事は銃身の寿命を伸ばすだけでなく、射撃後のクリーニングも楽になります。 ただ、摩擦が少ないという事は、火薬の燃焼による圧力が比較的低いうちから弾頭が動き始める事になりますから、従来の弾頭と同じスピードを出すためには通常よりも火薬を3%程多くいれるか、燃焼速度の少し速い火薬を使う必要があると言われてます。 飛行中の弾道は、よりフラット(より直線に近い)と言われています。 また、多くの弾を撃ってエロージョン(火薬の燃焼によって銃身内部表面に細かいヒビが多数できて荒れる事)が進行した銃身でも、従来の弾頭よりは命中精度が良かったというレポートもあり、潤滑作用によってスムーズに銃身内を弾頭が通過できる事がエロージョンの悪影響を低減させている事をうかがわせます。

なお、これまでの説明は使用した後の薬莢を再び使う説明でした。 新品薬莢の場合は、次のようにしてから雷管を付けて、火薬を入れ、弾頭を付けます。

以上でひととおり弾作りを説明しました。 最初に断ったように、これはあくまでも狭い住宅事情に向いた卓上用のアーバープレスを用いた場合のものですが、据え付け型の7/8"-14プレスを用いた場合も基本的な要領は同じで、リサイジングと弾頭のシーティングで用いる器具の形が違うくらいで、プレスを用いない作業は共通です。 なお、7/8"-14プレスはアーバープレスに比べて短時間に多くの処理をできますが、出来上がりの精度の違いがあるわけではない事を付け加えておきます(むしろアーバープレスの方が構造上、動作部にねじれなどがなく、きれいに上下するようです)。 命中精度を極限まで追求するベンチレスト射撃の方々は以上の他に、ネックの部分の厚さを円周にそって均一にするネック・ターニング(neck turning)等も行い、私が行っているよりは精密に各部のサイズを仕上げ、薬莢間の均一性を高めます。

_