射撃場の風景(2)

上は射撃場で見かけた50mのピストル射撃の標的です。 試合で用いた標的紙にセンターペーパーを貼って練習に用いたもののようです。 標的の右上部に斜めの線が2本引かれ、左上部に”SS”の文字が見えますから、本射前の試射(Sighting Shots)用の標的であることが判ります(斜めの線は通常赤の場合が多いですが)。 黒点の直径は20cmで、よく見ると弾痕が写っているのも判ります。

日本では射撃競技用に装薬(火薬を用いた弾を用いる)ピストルを所持できるのは、50人までという制限があります。 しかも、そのためには火薬を用いないエア・ピストルで4段を取るという、極めて厳しい条件をクリアーせねばなりません。 このシビアーな条件のために、実際に所持しているのは50人に満たない人数のようです。 オリンピックなどでピストル射撃に参加している選手というと、警察官を連想する方が多いと思いますが、民間でも、この厳しい条件をクリアーして、練習に励んでいる方もいるのです。

さて、装薬ピストルを持つ以前のエア・ピストルの所持も、全国で500人までという制限があります。 エア・ピストルを持つには、エア・ライフルの立射(立って撃つ競技)か、ハンド・ライフルといって、エア・ピストルの銃身に長いスリーブをかぶせた銃で初段を取る必要があります。 こちらは、比較的簡単ですが、常に500人の制限枠いっぱいに所持されていますから、誰かが手放すのを待たねばならず、申請してから1年半程度待つようです。 ライフル銃や散弾銃と違い、ピストルは(装薬とエア双方とも)所持し続けるのに大会での点数などで厳しい条件が付きますから、手放す人も結構でてくるわけです。

上の写真は、埼玉県の朝霞射撃場の監的壕(標的交換をする場所)での1枚です。 2つの標的が滑車で交互に上下する構造で、既に競技を終えた人や次に競技で撃つ人が、標的紙を張り替えて上下させる役につきます。 後で述べますが、古い施設のため、枠の車がレールを外れることもしばしばです。

貼られている標的紙は、50mのライフル射撃用の7文的と呼ばれるもので、左の2つが試射用の標的、残り5つが本射用です。 伏射(伏せて撃つ)60発の競技では、標的紙を6枚使い、1枚目の試射的には無制限に試射の弾を撃ちこめます。 試射を終えたら本射に移り、1つの標的に2発ずつ撃ちます。 2枚目以降は、試射的には最大2発までは撃てますが、調子良く撃っている時は、2枚目以降の試射は行わない人はけっこう多いと思います。 なお、3姿勢競技のように、複数の姿勢で撃つ場合は、各姿勢の最初の標的紙の試射的に 無制限に試射でき、その姿勢の残りの標的での試射は、同様に2発までです。 なお、「無制限」と書きましたが、競技時間の制限がありますから、10発前後、せいぜい20発程度で試射を終えるのが普通です。

これは、同じく朝霞射撃場の射座での1枚です。 伏射のために、銃の最後部のバット・プレート(butt plate)が肩の位置に合わせて上にスライドされています。 マイクロサイトのアイ・ピースのところに白くて右側が丸いものが付いていますが、これは照準で使われない左目の視界をさえぎって、右目での照準に集中するための目隠し板です。 人によっては、目隠し板を使わない両目照準をする人もいますし、メガネの片側のレンズに不透明なテープなどを貼る人もいます。

床には緑のマットが敷かれています。 ゴザのようなのは、両肘の下に敷くラグ(rug)ですが、他の射撃場では中にウレタン程度のかたさの詰め物をした布製のものが普通で、初めてこのラグを見た時は、昔の銭湯の足拭きを思い出しました。

朝霞射撃場は、1964年の東京オリンピックのために作られた施設ですが、オリンピック後にライフル競技の団体が引きとらなかったために、今は自衛隊の演習場の一角で自衛隊に管理されています。 競技用の施設ですから、自衛隊の射撃選手(一般兵士ではなく、体育学校というスポーツ競技選手だけの学校に所属)やオリンピックなどのナショナル・チームの練習、一般のライフル・ピストル射撃の大会で使われています。 以前は民間人も週末の練習に使えましたが、公務員に週休2日が採用された頃から、週末の練習には使えなったそうで(大会のみ)、ここで練習しようと思ったら、平日に休暇を取るしかありません。

オリンピックから30年以上経った今では、老朽化も激しく、戦前の軍隊経験のある方が「昔の軍の馬の厩舎の方がよほど立派だった」というほどです。 たまにテレビで税金を数10億、数100億、時には数1000億円投じて建設した施設がろくに使われないでいる実態が紹介されますが、そういう光景を見ると、この程度の射撃場くらい、きれいに修復して欲しいものだと思うのは、たぶん私だけではないでしょう。 また、一般の兵士が使わない競技用の設備なのだから、民間に管理を移して利用の便を良くして欲しいと願う射手も多いでしょう。

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