カッパー・ファウリング

今使っている .308Winの銃では2000発以上撃ってきましたが、すべてモリブデン・コートをした黒い弾頭を使ってきました(通常の弾頭を使う際にも、10発程度の例外を除いて、表面に2硫化モリブデンを塗布してから撃ってました)。

先日撃った際に、モリブデン・コートをしていない通常の弾頭を80発近く使ってみました。 撃ち終わったあとに、射撃場で軽く銃身をクリーニングし、家に帰ってから撮った写真がこれです。 射撃場では照明の位置の関係で銃口を覗いて見なかったのですが、自宅で見てみてびっくりでした。 写真で、銃腔内部表面に金色のスジが何本も見えてますが、これがいわゆるカッパー・ファウリング(copper fouling)で、弾頭が銃腔を通過する際に弾頭の銅が付着したものです。

ライフル銃の命中精度を保つためには、使用後に銃腔内部のクリーニングが必要ですが、取り除く対象としては火薬の燃えカスであるパウダー・ファウリング(powder fouling)と、このカッパー・ファウリングがあります。

火薬は高温・高圧のもとで燃焼するので、その燃えカスであるパウダー・ファウリングの物質自体は、もう化学的には他の物質と反応を起こしにくいのですが、空気中の水分を吸着してサビを生じる原因になったり、また、一部には燃焼でガラス状になって金属より硬くなった成分を含んでいます。

一方のカッパー・ファウリングですが、大口径ライフル射撃を始めた頃は、銅が銃身内部表面に付着して物理的に表面がデコボコになるのが命中精度上良くないのかと思っていましたが、実はガルバニック腐食(Galvanic Corrosion - 別名・異種金属接触腐食)が良くないのでした。 これは、異なる金属が接した場合に電位差によって一方の金属から他方へ電気が流れる事による腐食で、この電気の流れは科学の歴史においては初期の電池の原理でもあります。 銃身の素材としては、クローム・モリブデンとステンレスがありますが、どちらも銅に比べて標準電極電位が低いために電流は銅から銃身に流れ(つまり電子は銃身から銅へ移動)るために銃身が長期間の間に徐々に腐食するというものです。

モリブデン・コートをした弾頭のみを使っていた頃には、銅が付着したスジは、100発程度ごとに軽いクリーニングをしつつ2000発以上撃ってきても2本程度しか残ってなかったのですが、今回、この有様を見て考えこんでしまいました。 クリーニング剤は銅の除去にすぐれた Butch Bore Shine を使っているものの、普段使用している円筒形のフェルト・パッチでは銃腔面に対する圧力が弱いので、これほど銅が残ったものでしょう。 BBSはベンチレスト射撃のように10数発程度撃った段階でクリーニングできる場合にはパッチなどできれいに銅を除去できるようですが、50発から100発以上撃つ場合には、やはりブラシの使用が必要なようです(ただし、ブロンズ・ブラシはクリーナーによって徐々に溶けてしまうので、他の素材でできたものを用います)。 モリブデン・コートをした弾頭については賛否両論ありますが、通常の弾頭に比べて命中精度が実際に落ちた、という話は読んだ事もないし自分自身の経験でもないので、やはりフェルト・パッチで楽にクリーニングできるなら、これからも使い続けようかな、というのが今の状況です

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