スコープからの視界

本当は、射撃場で標的が写っている写真を出したかったのですが、明暗の落差の激しい長瀞のような覆道式(トンネル方式)の射撃場で撮ると、どうもきれいに撮れなかったので、つまらない電信柱などを撮ってしまいました。 肉眼で見たよりも電信柱がぼやけて写っているのは、スコープの像をカメラで撮るという、光学系の重複に起因しているのか、単にスコープとカメラの焦点の合わせ具合が完全ではなかったのか・・・。 十字線の細い部分に丸い印がついてますが、これはいわゆる「ミル・ドット(Mil Dot)」で、もともと軍用のスコープで距離計測用に開発されましたが、他にも距離の変化や、風の影響などによる着弾点の補正にも使えます。 ミル・ドットの「ミル」とはミリ・ラディアン(Milli Radian)の略で、角度の単位ラディアンの1000分の1です。 360度は2πラディアンですから、1ミルは360度の6283.185…分の1ですが、目測で使うので簡単のために360度=6283ミルとします。 で、十字線にミル・ドットを付けたスコープでは、1ミル間隔でこのように小円の目盛りをつけます。 計算すると判りますが、100m先で角度1ミルが張る間隔はちょうど10cmとしても100分の1mmの誤差もなく、また1km先では1mになります。 従って、仮に1mの大きさのものがスコープの視野でXミルを占めているとすると、標的までの距離は

   距離 = 1000 / X  (m)
となります。 この写真の例では、約3ミルを占める電信柱のこの部分の直径が仮に20cmだとすると、1mは15ミルに相当するので、距離は1000/15 = 約 67m となります。 このように、大きさが既知のものが視界にないと距離は割り出せません。 ちなみに目盛りの小円は、この写真では判りにくいですが、長径が0.25ミルの楕円ですから、小円の中心間の距離は1.0ミルでも、端から端までは0.75ミルで、これら各部の細かい距離をたよりに0.1ミルの精度で計って距離を割り出します。

なお、以上は米軍の海兵隊用のミル・ドットでの話ですが、「ミル」という単位の使用は海兵隊より陸軍の方が早く、もともとは銃の弾丸の着弾点ではなく、大砲の着弾点の微調整のために導入したようです。 陸軍では、1ミルを数字の上できりの良いように360度の6400分の1と再定義して使っています。 従って、ミル・ドットを備えたスコープを持っていても、それが陸軍仕様なのか海兵隊仕様なのか把握していないと、2パーセント程度の誤差が生じうる事になりますが、これ自体は目測の精度では無視できる程度かと思います。 更に、「ミル」の定義以外にも、目盛りの小円は、海兵隊仕様では長径0.25ミルの楕円なのに対し、陸軍仕様でが直径0.22ミルの円という違いがあります。 また、精密射撃でよく使われる角度の1分(MOA = Minute Of Angle)との関係でいえば、海兵隊仕様では 1ミル = 3.438 MOA、陸軍仕様では 1ミル = 3.375 MOAとなります。

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